にゃんころり。な日常

日々のちょっとした変化や空想の話を綴れたらと思います。※Twitterは写真載せてます。

【小説】シエンの通る道 4

山の上にある村では旅人がよく訪れる。その村を通り過ぎた先にあるのは貿易の盛んな港町に続く道があるからだ。

余裕のある人々や馬車などを使う人々は山を登らずに行ける道を選ぶが、港町に急ぐ人にとっては山を登ってリンメイたちのいる道を通ったほうが近道なのである。

そのため村自体は小さくはあったものの、鉱山での稼ぎと同じくらい、旅人たちに宿や食事を提供することを収入源としている人も多い。

 

リンメイたちの店も、常連のお客もいれば旅人もよく利用するため、幼いころはよく旅の話を聞きながら村の外の世界に憧れたものだ。村から出たとしても近隣の村に買い出しに行くときくらいで、海という水が一面に広がっている光景も、平野に色とりどりの花が咲き乱れる景色があることも、想像するしかできない。この世界がどれだけ大きいのだろうと想像することも、その知らない世界をこの目に焼き付けたいという夢も、子供だった二人にはわくわくする楽しみのひとつだった。

 

しかし両親を亡くし、店を継ぐと決めてからというもの急がしい日々が続き、今では村を出ることさえ考えられなくなっていた。近所の村人や常連のお客が支えてくれているからこそ、今が成り立っている。その感謝の気持ちを料理で返そうというのがリンメイとカンランが話し合って決めた目標だったからだ。

 

だからこそ、その出会いが二人にとって大きな転機になるということも考えもしなかった———————…。