【小説】シエンの通る道 3
リンメイの料理は村の中でも指折りの実力で、隣の山の村からもわざわざ足を運びに来るほどだ。ハンの注文した炒飯をつくり終わった後も、せっせと料理を作るリンメイと、注文を取りつつ食材のチェックや配達の手配を済ませる弟のカンランは、親が亡くなった後もしっかりと店を引き継いでいた。
もっとも、カンランは店だけではなく鉱山の手伝いに行ったり、それこそ遠くの村に越した常連に日持ちのする料理を届けたりと…目つきの悪さとは裏腹によく働き、たった一人の姉を支えていた。
日の高い時間を超えて、ようやく店が落ち着いてきたところで、リンメイは弟に声をかける。
「ふう~…カンラン、そろそろ私たちもお昼にしよう。今日は何が食べたい?」
客のいなくなったテーブルから皿を片付けながら、カンランは少し考えて口を開く。
「…ん、じゃあ————。」
その時だ。
「リンメイちゃん!!大変だ!!!」
バタバタと店に勢いよく飛び込んできたのは、先ほど満足しながら帰ったはずのハンだった。
「ハンさん?どうしたの?そんなに慌てて…もしかして忘れ物?」
驚いたリンメイがカウンター越しから問いかけると、ハンは勢いよく頭を横に振って身振り手振りを加えながら答える。
「違う違う!!そこで、村の入り口で!!行き倒れてるやつがいるんだ!!!!」