【小説】シエンの通る道 2
酒を止められたハンは苦い顔を向けるが、それを上回るほどのカンランの鋭いにらみが返ってくるので思わずひるむ。
「うっ…はあ…今日はカンランがいるとは、ついてねえ…。」
「ああ”?なんて言った?おっさん————。」
思わず口を滑らせたハンに対してさらに鋭い眼光を向けるカンラン。その時だ。
「カンラン!!」
いつものかわいらしい声よりも少し低め、しかし怒りの声色で姉のリンメイがカンランに対してピッと人差し指を向けた。
「今日はお店を手伝うって約束でしょ?お客さんに対してそんな態度を取ったらダメよ!反省!!」
姉の言葉には弱いらしい。カンランは「う”っ。」と言葉を詰まらせた後、姉の方をゆっくりと、猫背のように背を縮めながら見つめた。
「は・ん・せ・い!!」
姉の力強い瞳と言葉に、むすーッとしながらも渋々カンランが口を開いた。
「———…すみませんでした、ドウゾゴユックリ。」
片言な口調でそう言った後、カンランはのそのそとその場を去って、ほかのお客の注文を取りに行く。
「もう!…ハンさん、ごめんね。すぐ炒飯つくるね。お酒はいる?」
リンメイが申し訳なさそうに聞くと、ハンも苦笑いしながらこう言った。
「いやあ、こっちも悪かったよ。今日は家で飲むわ…怒られっかもだが。久しぶりに早く仕事が上がれそうだしな。家族一緒に食事、してみるわ。へへ。」
ハンの仕事は村の裏にある山を掘り、鉄などの鉱物を採掘する仕事で、朝から晩まで働く重労働だ。たまの休みも酒を飲み歩くようになってから、娘とはあまり話が出来ていないとも聞いていたので、リンメイはにっこりと笑顔で頷いた。
「分かった!じゃあとびきりおいしい炒飯をつくるから、夜は家族水入らずでゆっくり過ごしてね。」