【小説】シエンの通る道 1
————————…。
深々と降り積もる雪の中で、一つの出会いがあった。
懐かしくて、尊い。
そして一つの約束をした。
願わくばこの願いが…永遠に続きますように…。
その数年後、とある山奥の村にて…。
その村に昔からある食堂では、がやがやとにぎわう音が聞こえてくる。
村の若い衆や、老人まで、さまざまな年齢層の客がいる中、注文するために男が手を上げた。
「リンメイちゃん!こっちに炒飯と酒をくれ!!」
四十を超えた男性の言葉に、呼ばれた少女は振り返りながら言った。
「ハンさん、またお昼からお酒?また奥さんに叱られるんじゃないですか?」
リンメイは歳は十八、琥珀色の髪を耳下あたりで二つに結い、それを丸めてお団子にしている。薄い桃色の民族衣装で、赤い靴を履いた彼女はこの店の看板娘であり、若くしてお店を切り盛りしていた。
「それは言わないやくそくだぜ~。一杯!一杯だけ…な?」
ハンが両の手を顔の前で合わせて、子供のようにねだってくる。いつもはこれでリンメイも渋々了承するのだが…。
「…おっさん、今日は姉ちゃんが許しても俺が許さないぜ。」
ハンの後ろから現れたのは、リンメイよりも赤みがかったボサボサの髪の少年だった。両側のこめかみから耳下までの束を筒状の髪飾りでまとめており、大きな瞳を半分隠すような目つきが怒っている印象を与える。
彼はリンメイの弟のカンラン。この店、「タルタオ食堂」は昨年亡くなった二人の両親が残してくれたお店だ。
*1:こちらはフィクションであり、実際の団体や人物とは一切関係はございません